カテゴリ/高槻Life 投稿日/2022-06-23
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。」
今年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも、前半のクライマックスとなった源平の合戦。
「平家物語」は、その冒頭で、栄華を極めた平氏がいとも簡単に滅びていく姿をこの花にたとえました。
一年でたった一日、朝に咲き夜には散ってゆく。
幻の沙羅双樹の白い花です。
沙羅双樹といえば、京都の東林院を思い浮かべる人も多いでしょう。
でも実は、京都まで足をのばさなくても、私たち高槻市民は、市内でこの奇跡の花を目にすることができるのです。
その場所こそ、高槻市富田町にある「普門寺」です。
今は静かな普門寺ですが、かつては、室町幕府の要職である摂津管領・細川晴元や14代将軍・足利義栄も滞在しました。
方丈は、国の重要文化財にも指定されています。
この方丈のすぐ前の庭で、6月のこの時期だけ、沙羅双樹が静かに開花のときを迎えます。
「一日花」といわれる沙羅双樹の花ですが、たとえ朝咲いていても、気温が高くなると昼を待たずにしぼんでしまうため、実際には半日も持たないことも多々あります。
そのうえ、温暖化の影響でしょうか、普門寺では、例年見頃は6月の中旬から下旬でしたが、ここ数年は上旬に前倒し。
そのため、開花のタイミングも読みにくく、以前にもまして出会うことが難しい貴重な花となったのです。
ちなみに、日本で「沙羅双樹」と呼ばれるこの花は、本来「夏椿」という品種。
お釈迦様が亡くなられたときに生えていたとされるインドの「沙羅双樹」とは、正確には別の花です。
寒さに弱いインドの「沙羅双樹」は日本では育たないため、古来より、この夏椿を沙羅双樹として代用してきました。
「あとどれくらい咲いていられるのか…。」
そう思うと、白い姿がいっそう儚げで、愛おしく感じますね。
今年の沙羅双樹の季節は、残念ながら終わりを迎えましたが、普門寺にはこれ以外にもたくさんの見どころがあります。
その一つが国指定名勝となっている「観音補陀落山の庭」です。
江戸時代、この庭を作った玉淵は、桂離宮の造園にも携わったのではないかとも伝えられています。
さらには、「インゲンマメ」のルーツとなった隠元隆琦も住持を務めた普門寺。
傍らのアジサイが美しい石畳は、隠元禅師の作です。
雨に濡れた姿が厳かで、非常に趣深く感じられます。
◆ 普門寺
【住所】高槻市富田町4丁目10-10
【電話】072-694-2093
【拝観時間】13時半~16時
(※拝観には、事前予約が必要です。)
【拝観料】500円
【アクセス】JR摂津富田駅・阪急富田駅から南へ徒歩15分
諸行無常、盛者必衰。
長い歴史に包まれて、ひっそりと、けれども、凛々しく咲く沙羅双樹の花。
都会の喧騒を忘れさせてくれる高槻・普門寺で、儚いからこそ美しい命の神秘に感動した昼下がりでした。
カテゴリ/高槻Life 投稿日/2022-06-23
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